【特集】 茨木市への病院誘致

 2月15日(月)、茨木市は第一回病院誘致あり方検討委員会を開催した。医療機関不足が指摘される市内中心部や南部への病院誘致のあり方について、専門家が集められ、現状の把握や方針が示された。


 茨木市では長年、救急患者や高度医療を必要とする患者を他市に依存する状態が続き、血管疾患患者や夜間救急小児患者への対応ができないという問題を抱えており、市内への病院誘致を求める声が相次いでいる。市は平成31年に茨木市地域医療資源調査分析結果報告書をとりまとめるなど、積極的な動きを見せている。今回の委員会は、病院整備構想の策定に向けて、10~20年単位の長期構想を策定する上で、専門家の意見を聞き、方向性や目指すべきあり方について決定するために開かれた。委員は大学教授や医師などから集められた計8名。その他に市役所などから関係者が出席した。委員長は立命館大学大学院経営管理研究科の肥塚氏、副委員長は大阪大学大学院医学系研究科の村木助教が就任した。


 委員会ではシステム環境研究所によってまとめられた茨木市および周辺圏域の医療体制についての調査結果が共有され、集中治療室などが必要な救急患者である高度急性期患者に対応できる病院が少ないことや、今後予想される高齢化に伴って需要が増大する、発症後、術後のリハビリテーションを行う回復期機能を有する病院が不足すること、がんや脳梗塞、心筋梗塞に対応できる病院がない、または少ないことが指摘された。また、小児医療を担う病院が人口比で少なく、小児救急患者に夜間対応できる病院がなくなったことが問題とされた。


 茨木市は大阪府の策定する医療計画において、高槻市、摂津市、三島郡島本町とともに三島二次医療圏に属している。大阪府の計画の下、医療機関が整えられていくため、新規の市民病院などを設置することは難しく、基本的には三島二次医療圏内の病院を、市中心部へ移転することしかできない。委員会の最後には、病院誘致に係る医療機関への聞き取り調査の対象が示された。この聞き取り調査は誘致病院の選定に影響するわけではないとの但し書きがあるものの、移転病院の候補と捉えられるだろう。条件は次の通り。


・小児科を標榜していること

・既存施設の整備から比較的年数(20年以上)が経過していること

・DPC対象病院を有していること

・医療圏内に一般病床250床以上の病院を有していること


 この条件から、移転候補病院の数はかなり絞られる。条件に合致する病院は、高槻病院(477床、築39年)と、高槻赤十字病院(439床、築51年、全面改装から20年)の2病院のみであり、そのうち高槻病院は付属のリハビリテーション病棟があるため、候補は事実上高槻赤十字病院のみと考えてよいだろう。 


 高槻赤十字病院は高槻市の西部に位置する病院だ。建設後50年が経過し、施設や設備の老朽化が進んでおり、年間10億円の赤字が発生しているなど厳しい経営が続いている。高槻赤十字病院は数年前から移転の話が上がっており、茨木市の東芝工場跡地や、高槻市のパナソニック工場跡地へ誘致する計画が存在した。しかし東芝工場跡地には追手門学院の新キャンパスが入り、パナソニックとの価格交渉も折り合いが合わなかったようだ。


 ここで気になるのが移転先だ。委員会では移転先について示されなかったが、福岡市長は双葉町の駐輪場へ病院を誘致すると前々から発言している。市営の駐輪場となっているこの場所は、駅前にしては広大な駐輪場(5,776㎡)となっている。木元市政下では、この場所に新たな市民会館を建設する方針(茨木市文化芸術ホール建設基本構想)であったが、福岡市政になり計画は白紙化。市民会館は南グラウンドに建設することになったため、現在も宙に浮いた状態だ


 茨木市の要望と病院側の要望に折り合いがつけば、移転はスムーズに行えるかもしれない。しかし、「移転はパナソニック跡地が最善」とかつて高槻赤十字病院は発言しており、どうなるかはわからない。高槻市も病院を手放すまいと働きかけを強めるだろう。しかし、既に人口減少が進み今後需要が減少していくだけの高槻市より、需要が今後も増大し続ける茨木市に移転する方が、より多くの人を救えることになるのではないだろうか。

 

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